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漢方民間雑学ノート(13) 2006. 12.15

 今回は前回に続いて、傷寒論の最初に出てくる桂枝湯と、桂枝湯を基本として成り立っている薬方のいくつかをご紹介することにする。
 
 桂枝湯は風邪のような熱のある病気に用いる時は、悪寒または悪風、発熱、頭痛があって、脈は浮(表面に浮いていて、力を入れると抵抗が無く消えそうになる)で、弱(字の如く力の無い脈)が目標となる。この場合、汗が自然ににじみ出るような状態が適応となるが、悪寒、発熱、頭痛がありながら脈は充実していて(実脈)、汗が出ない場合は実証の度が強く、桂枝湯では不足となる。
 
 ただし、このような風邪症候群や熱性疾患に対する薬方は次回に述べることにし、今回は桂枝湯類の組成を中心に解説することにする。
 
 桂枝湯の芍薬の量を増量すると、桂枝加芍薬湯という薬方になる。桂枝揚が太陽病の治剤であるのに、本方は太陰病の治剤となる。これは、冷え症で腹が張り、腹痛のあるものを目標とし、腹筋は緊張しており、下痢をしていることもある。
 
 大腸炎、急・慢性腸炎、直腸炎等に適応があるが、過敏性大腸症候群には、繁用される漢方である。本方に大黄を加えると、桂枝加芍薬大黄湯となり、桂枝加芍薬湯の証で、便秘があるもの、または便秘と下痢が交互に来るような場合に使用される。桂枝加芍薬湯に膠飴(本来の水飴)を加えると、小建中湯という薬方になる。本方は一種の強壮剤で、普段から虚弱で疲労し易いもの、または本来は頑丈であっても、無理を重ねて、ひどく疲労しているような時に応用の機会がある。
 
 腹診すると、腹壁が薄くて、腰直筋が腹表に浮かんで緊張しているものと、腹部が軟弱、無力で、腸の動きがわかる場合がある。後者の場合、大建中湯(後述)の腹証と区別がむずかしい。
 
 小建中湯の膠飴と大棗(なつめ)は滋養強壮の効があり、甘草と組んで心悸亢進を治す。
 
 生姜には健胃の効があり、薬剤の吸収を促すとされる。本方は応用範囲が非常に広く、殊に小児から乳幼児に用いる場合が多く、虚弱児童の体質改善、夜尿症、夜啼症、胃炎、小児の感冒、麻疹、肺炎などの経過中に、急に腹痛を訴える場合などに用いられる。その他、いくつかの慢性疾患に適応があるが、筆者は以前、小学生の夜尿症に用いて著効を見た経験があり、また何人かの幼児のそけいヘルニアに用いて、手術せずに治癒した例を見ている。その他、関節炎、端息、紫斑病、フリクテン結膜炎などに効があるとされており、大塚敬節氏は、本方で小児のどもり症を治した例を述べられている。小建中湯に黄耆を加えた方が、黄耆建中湯で、小建中湯症で更に虚状のものを目標とする。盗汗のひどいもの、慢性中耳炎、痔瘻、下腿潰瘍などに用いられる。
 
 桂枝加芍薬湯に当帰を加えた方が、当帰建中湯で婦人病から来る下腹病、子宮出血、月経困難症、痔、脱肛などに用いられる。小建中温に、黄耆、当帰の両方を加えたものが、帰耆建中湯といい、夏に全身の衰弱が強い場合に使用される。
 
 建中湯という名称があっても、大建中湯は桂枝湯類とは異なり、人参、山椒、乾姜の三つから成る。腹膜癒着による腸管通過障害、尿管結石、胆石、過敏性大腸症候群などに用いられ、効果が高い薬方である。大建中湯と小建中湯を合わせたものを中建中湯と言う。腸管の通過障害に用いられる。筆者は、癌性腹膜炎で、腸の通過障害の著しい患者さんに用いて、一時的ではあったが、数ヵ月間、病状の改善を見た経験がある。
 
枇杷(ビワ)
 
 ビワは中国名枇杷Pipaの音読みで、原産地は中国および日本である。千葉県、特に南房ではなじみの深い植物である。初秋のころ、菜を採集し裏面の毛をブラシなどで除き陽乾したものが生薬の枇杷葉である。また陽乾した種子を枇杷仁と呼ぶ。
 
 一般には、葉を適宜摘み、水洗いして生のまま利用する。薬効をあげると(1)咳、健胃=葉の裏面の小さい毛をぬぐい去り、4〜10gを1日量とし刻んでせんじて飲む。せんじた後、水飴を入れるとなおよく効く。種子を1日5個、つぶしてせんじても良い。(2)利尿=生、または乾燥した葉を4、5枚1日量とし、茶の代りにせんじて飲むと、尿の出をよくし、浮腫をとる。(3)マムシの咬み傷、毒虫刺され=種子をかみ砕いてつける。また種子を粉末にして、米のりでねってつける。(4)あせも=葉をせんじた汁で湿布する。また、風呂に葉を入れても良い。(5)皮膚炎=毛虫や白髪染めなどにかぶれた時、葉をせんじた汁で湿布すると奇効があるという。生のまま利用できないときは、最初に述べたように、枇杷葉、枇杷仁を密閉容器に保存しておいて用いると良い。

(以上、主として大塚敬節氏著書より引用)

JA千葉厚生連 医師 中村常太郎
JA千葉厚生連 医師 中村常太郎
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