JA千葉厚生連 医師 中村常太郎
これからホームページで漢方に関することを連載することになった中村です。
自分は、現役の時代は外科医。それも心臓外科医であったので、それが何故漢方か?と今までに多くの医者仲間から訝られてきた。このことについてはあとで触れるとして、最初に一寸、言葉の説明をしておくことになるので、少しのご辛抱をお願いしたい。
漢方とはその名の示す如く漢の医方であって、もともと日本にあったものではない。その昔、中国から伝えられた医学である。最初は朝鮮を通じて間接的に伝えられたが、奈良・平安時代になってからは、遣隋使、遣唐使などの交流を通じて、直接中国から伝えられた。平安時代に、現存する日本最古の医書である“医心方”が丹波康頼により編さんされた。(西暦984年)これを見ると、この時代は隋、唐医学の模倣が殆どであったようである。
この後、時代を少し省略して、室町時代の中期に白河の田代三(タシロサンキ)という人が明に行き、金、元の医学を学び、わが国に持ち帰った。これを三の高弟である曲直瀬道三(マナセドウサン)が受け継いで、ここから日本全国に広がったと言われている。
「NHK」の番組の言葉を借りれば、日本の漢方医学の“その時歴史が動いた”ということになる。この後も、日・中の医学は常に交流を続けられながらも、それぞれ国情の違いその他から、かなり異なった経過を取って現在に至っている。従って、現在一般に漢方と言えば、日本に根づいた日本の伝統医学であり、これを和漢診療学と表現している医家(富山医科薬科大学寺沢捷年教授)もいる。
そして、現在の中国の伝統医学を中医学と言っているのである。
―次回は民間薬と漢方薬の違いについて紹介します
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