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漢方民間薬学ノート(12) 2006. 09.20

JA千乗厚生連 医師 中村常太郎

 およそ漢方医学に興味を持つ人、特に医師や薬剤師ならば、傷寒論の名前くらいは知っていないと恥をかく。それくらい有名な古典がある。
 
 西暦200年頃、後漢の時代に、張伸景という人が著したと言われているが、詳しいことは謎に包まれている。もう1冊、同じく張仲景の編とされている、金匱要略という教本とともに(もともとこれは傷寒論と1本にまとまっていたが、宋代になって分離されたということになっている)漢方の薬物治療を論じた、最高で最古の古典なのである。
 
 日本では、かなり以前からこの訳本、あるいは解説書が出されてきたが、筆者が傷寒論に取り組んだのは、30数年も前の、昭和41〜42年頃であった。奥田謙蔵著『傷寒論講義』を一生懸命読んだ。というよりは読む努力をした。極めて難解、遅々として進まない。夜は睡眠剤の代りになったこと数知れずであった。
 
 この本は、奥田先生(後年は市川に在住)が、奥門会で傷寒論を講義すること10年、推敲に推敲を重ねたその草稿を門人の方々が昭和40年に上梓したもので、序文は和田正系氏が奥門会の代表として名文を寄せている。そしてこの本の編纂に従事された人々は、伊藤清夫氏を中心に藤平健、小倉重成、その他の方々で、ほとんどが故人となる人だが、干葉の漢方の名医達であった。
 
 今回は、この傷寒論講義の極く最初の部分と桂枝湯について紹介することにしたい。
 
 この本の最初の緒論では、「疾病とは…」から始まり、證(この欄では証の字を使っているが、この本では證を使用)、陰陽、三陽三陰、虚実、中風、傷寒等が解説されている。
 
 次いで、本論『辧太陽病脈證扞治 上』として太陽病を中心に解説されている。
(1)太陽之爲病。脈浮。頭項強痛。而悪寒=太陽の病たる、脈浮に、頭項強り帰み、而して悪寒す。(中略)
(2)太陽病。発熱。汗出。悪風。脈緩者。名爲中風=太陽病、発熱し、汗出で、悪風し、脈緩なる者は、名つけて中風となす。(中略)
(3)(漢文略)=太陽病、あるいは巳に発熱し、あるいは未だに発熱せず、必ず悪感し、体痛み、嘔逆し、脈陰陽倶に緊なる者は、名つけて傷寒と言う。
 
 簡単に説明すると、太陽病で発熱し、汗が自然に出て、悪風し、脈が浮いて、緩やかな場合はこれを中風と言い、発熱があってもなくても、必ず悪寒(悪風より強い)があり、脈が緊(緊張が強い)で、嘔気があり(汗は出ない)状態は、これを傷寒と言うのである。そして、傷寒を論ずる故に傷寒論なのである。
 
 途中を略す
 
 十二として、太陽の中風、陽浮にして陰弱、陽浮は、熱自ら発し、陰弱ま、汗自ら出ず。しゅくしゅくとして悪感し、せきせきとして悪風し、きゅうきゅうとして発熟し、鼻鳴し、乾嘔する者は、桂枝湯之を主る。と、最初の薬方、桂枝湯が出てくる。筆者は、以前からこの傷寒論を極めて難解、ただし名文と感じていた。後で多くの方々が同じ様に感じていることを知った。
 
 ところでこの主るという表現は、かなり強い言い方で、これ以外に無いという意を持っている。この文章で、陽浮にして陰弱が難しい。更に奥田先生の解説がまた難解ときている。
 
 この後、桂枝湯方として、桂枝3兩、芍薬3兩、生姜3兩、甘草2兩、大棗12枚と処方が記載され、煎じ方、服用法等が説明されている。そしてこの傷寒論に取り上げられている方剤数は全部で117あるのである。次回も桂枝湯、その他についてもう少し述べる予定である。
  
 桂枝湯の桂枝(桂皮)は、漢名桂、中国名肉桂、桂木、学名「Cinamomam cassia Blume」、類似植物としてニッケイ、セイロンニッケイ(CeylonCinamon)。市販されているシナモンのほとんどは本種と言われている。
 
 ニッケイ、日本ケイヒ(Cinnamomum Okinawense Hatusima)は、ニッキとして売られていた(いる)もので、根皮を乾燥して粉にしたものは菓子や料理に使う。京都の八つ橋はよく知られている。

JA千葉厚生連 医師 中村常太郎
JA千葉厚生連 医師 中村常太郎
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