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■漢方民間薬学ノート(16) 2008. 2.19

JA千葉厚生連 医師 中村常太郎

 前回に続き今回も、風邪およびその類縁の疾病に頻用される薬方について述べることにする。
 
  小青竜湯、麻黄、芍薬、乾姜、甘草、桂枝、細辛、五味子、半夏から成り、エキス剤も市販されている。病態は、大陽病気、表虚証で、表に邪があり、裏に水毒あるものに用いる。
 
  多くは平素から水毒性体質のあるものが、外邪に誘発されて起る諸種の病状を治する。
 
  このような患者は感冒にかかると、気管支炎、または喘息様気管支炎を起こし、咳嗽を頻発し、喘鳴、息切れを訴える。泡沫状の咳を喀出する。
 
  気管支炎、気管支喘息、百日咳、肺炎、胸膜炎(湿性のもの)、アレルギー性鼻炎、関節炎、結膜炎等に用いられる。
 
  又、ネフローゼ、腎炎などの発病初期の浮腫に用いられることがある。
 
  今の時期、杉花粉症で、くしゃみが頻発し、鼻水がしたたるような例に、本方の効くものが少なくないが、残念ながら全例にと言うわけにはいかない。喘息、特に小児の喘息で、くしゃみ、鼻水から始まる場合は、先ず本方の適応と考えて良い。
 
  筆者は、かなり以前ではあるが、先天性の心疾患(心室中隔欠損症その他)で、気管支喘息の発作を起す小児に本方を試み、著効を見た例を幾つか経験している。又、風邪から急性腎炎を併発した知人に本方を用い、激しい咳と浮腫が劇的に軽快し、その見事な効に驚いた思い出がある。
 
  病態は小青竜湯に似るが、更に悪寒が強く、全身倦怠感が著しい虚弱者や老人によく用いられる薬方に麻黄附子細辛湯がある。
 
  その名の通り、麻黄、附子と細辛(ウマノスズクサ科のウスバサイシンの根)から成る。
 
  元々老人には、麻黄は注意が必要であるが、この方剤は麻黄を含みながらも組み合わせの妙というか、老人にも比較的安心して使用出来る。
 
  今まで使用して困った例は無い。
 
  病態はこれまでの、葛根湯、麻黄湯、小青竜湯とは異なり、小陰病期、虚実間証となる。
 
  適応は感冒、気管支炎、気管支喘息、鼻炎等であるが、目標の第一は悪寒であり、熱感は極めて少ない。熱があっても顔色は青白い。
 
  脈は沈んで力がなく、触れにくい。附子、細辛はいづれも温薬で、麻黄も血行を旺盛にするため、悪寒を治する作用は強い。
 
  往々にして咽喉痛を伴うが、これも良く改善する。桂枝湯から芍薬を除き、これに本方を加えると、桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯、別名桂姜棗草黄辛附湯という薬方になる。
 
  パンチ氏病、座骨神経痛、乳癌その他陰陽の気が分離し、ばらばらになって起こるとされる疾病に用いることになっているが、今回それ以上は言及しない。今回はもう一剤、麻黄を含まない、風邪に気楽に使用できる、香蘇散という薬方を上げておく。本方は現在漢方研究者の中で中堅として活躍している花輪壽彦氏の推薦する頻用薬方で、氏によると、老若男女を問わず、又、風邪の全過程で使用して治癒を早め、特に消化器症状や抑うつ気分を伴うものに良いという。本方に香附子(はますげの根)、蘇薬(紫蘇の葉)、陳皮(後述)、甘草、生姜より成り、元来、気のうつ滞を発散し、疎通する芳剤である。
 
  本方は風邪の他に、魚肉の中毒、蕁麻疹、婦人の血の道の病、神経衰弱、ヒステリー等に使用される。
 
■みかん
 
  香蘇散に入っている陳皮は、みかんの皮を干したものである。風邪には、陳皮5g、紫蘇の葉を干したもの(蘇葉)2g、甘草2g、根生姜3gに1日量として煎じて飲む(※これに香附を加えれば上述の香蘇散となる)。
 
  尚、この中で蘇葉が無くても咳には効くようである。その他、水虫には陳皮を火でいぶし、その煙を患部に当てる、皮膚の荒れには、実をしぼって、荒れている所にすりこむ、等々あるがその他は省略する。

JA千葉厚生連 医師 中村常太郎
JA千葉厚生連 医師 中村常太郎
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