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■漢方民間薬学ノート(15) 2008. 1.11

JA千葉厚生連 医師 中村常太郎

  生体には自らの健全性を維持する能力が備わっており、病的機転が作用した場合には、これを排除する自然治癒力が発動される。
 
  東洋医学では、気・血・水が正常に保たれ、その循行が滞りなく行われていれば病気にならないという理念がある。この気・血・水の健全性を損なう因子を病因とし、内的なもの(内因)と外的なもの(外因)を想定している。
 
  内因には感情的なストレスとして7種があり、怒・喜・思・憂・恐・悲・驚を「七情」と言う。外因には6種をあげ、風(目に見えない伝播性の病因。風邪、インフルエンザ、神経痛、脳卒中等を風に侵された病態とする)・寒・暑・湿・燥・火を「六搖」と言う。
 
  なお、不内外因として、生活上の不摂生(生活習慣病その他)、外傷等がある。日本には四季があり、冬は外因の寒・燥が多くなる。風に起因する感冒、インフルエンザが多発する時期となる。そこで、風邪症候群に対する漢方治療、繁用される漢方薬について幾つかを紹介することにする。
 
  漢方医学では、疾病とその病態から、陽症、陰症、実証、虚症に分け、さらに疾病の進行状態、即ち、全体の経過を証と関連して六病位※という。ステイジアムに分類して治療を行うのであり、このことは以前に述べた。
 
  ※大腸病期、小腸病期、陽明病期、大陰病期、小陰病期、厥陰病期
 
  感胃やインフルエンザ等の急性熱性疾患は、その性質上、大陽病からはじまるものが大部分であるが、時にはすぐに小陽病または陽明病に移行する場合もあり、また、もともと虚弱な体質で、最初から大陰病期で始まる場合もあり得る。
 
  以上の事柄を念頭におきつつ、風邪を診る場合の注意点は、第一に自然発汗の有無が重要になる。というのは、発汗は急性熱性疾患では、治癒機転の重要な現象と考えることと、虚症の場合には、皮膚の保湿作用が弱く、往々にして必要以上に早くから発汗し易いことがあるからである。悪風(風に当たるとゾクッと嫌な感じがする)、悪寒を伴う発熱があり、風邪の始まりかと感じた場合、時に最初から上半身を主に自然発汗を見る場合がある。
 
  このような時には葛根湯、麻黄湯等麻黄を含む方剤は控えるべきで、体力を消耗させることになる。これは、大陽病期でも表虚症という病態で、以前に述べた桂枝湯の証となる。ただし、普段元気な人の風邪では、最初は無汗の場合が圧倒的に多く、麻黄を含んだ方剤の適応症が多くなる。代表的な薬方をあげる。
 
(1)葛根湯
 
  悪寒、発熱、頭痛があり、筋肉痛特に項背部の強い凝りがある場合は、まず本剤を考える。この処方は、桂枝湯(桂枝、芍薬、大棗、生姜、甘草)に葛根、麻黄を加えたもので、よく知られた、又尤も多く使われている薬剤である。
 
  漢方的病態で言うと、大病期表実証で、風邪以外に使う場合は、結膜炎、中耳炎、扁桃炎、乳腺炎、リンパ腺炎、肩凝り、上半身の神経痛、蕁麻疹等応用が広い。ただし、注意点としては、老人には使用量に注意する。(麻黄のために動悸が強く出ることがある)また、高血圧、狭心症がある場合は、時にこれを悪化させることがある。前立腺肥大で尿の出が悪い場合は一過性に更に尿の出を悪くする。
 
(2)麻黄湯
 
  同じく大陽病期表裏証の病態で、自然発汗がなく、体力充実した人の熱性疾患の初期に使われる。悪寒、発熱、頭痛、腰痛、四肢の関節痛等があり、また喘鳴、味噺を伴う場合、乳幼児の感冒、鼻づまり、鼻出血のある場合等に適応がある。注意することは葛根湯と同様である。以下は次号で。
 
■柚子(ユズ)
 
  冬至にユズ湯という習慣があるが、実を風呂に入れると冷え性に効く。神経痛、リウマチにも効果があり、感冒の予防にもなる。皮のまま実をしぼり、砂糖をまぜ熱湯を注ぎ熱いうちに飲むと風邪によい。のどに骨の刺さったとき、種子を押しつぶし、これに熱湯を注いで少しずつ飲む。また押しつぶした種子を煎じて、その汁を飲むとよいという。機会があったら試みて下さい。

JA千葉厚生連 医師 中村常太郎
JA千葉厚生連 医師 中村常太郎
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